売る人へ(プロ)
焙煎した豆の売価の決め方
目標の粗利率から、逆算する
「いくらで売ればいいのか分からない」——自家焙煎を始めた人が、必ずぶつかる壁です。安すぎれば続かず、高すぎれば売れない。答えは「原価に足す」のではなく「粗利率から逆算する」こと。この順番にするだけで、値付けは驚くほどラクになります。
「原価+いくら」で決めてはいけない
原価353円だから、500円で売ろう——気持ちは分かりますが、これだと手元にいくら残るのかが見えません。包材も光熱費も自分の時間もあるのに、「なんとなく足した金額」では、忙しいのに儲からない状態になります。プロは逆から考えます。「粗利を何%残したいか」を先に決めて、そこから売価を出すんです。
- 売価 = 原価 ÷ (1 − 目標粗利率)
- 例)原価353円・粗利率60%を狙う → 353 ÷ (1 − 0.6) = 353 ÷ 0.4 = 約883円 → キリよく 890円
- ※「原価 × 2.5倍」のようなざっくり法より、狙った利益がきちんと残ります。
→ 原価(焙煎後の原価/g)の出し方は コーヒー1杯の原価計算 をどうぞ。
100g袋で、粗利率ごとに比べてみる
生豆3.0円/g・歩留まり85% = 焙煎後3.5円/g、100g袋の原価353円のケースです。
| 目標粗利率 | 計算 | 売価(10円切上げ) | 1袋の粗利 |
|---|---|---|---|
| 50% | 353 ÷ 0.5 | 710円 | 約357円 |
| 60%(目安) | 353 ÷ 0.4 | 890円 | 約537円 |
| 65% | 353 ÷ 0.35 | 1,010円 | 約657円 |
| 70% | 353 ÷ 0.3 | 1,180円 | 約827円 |
自家焙煎の豆売りなら、粗利率60〜70%あたりが一つの目安です。ここには包材・光熱費・ロス・あなたの手間が全部含まれることを忘れずに。粗利率50%だと、それらを引いたらほとんど残りません。
相場と照らし合わせる
逆算で出た数字は「自分の都合」です。最後に必ず市場と照らすこと。スペシャルティ系の100g袋は、おおむね800〜1,500円のレンジ。上で出た890円は、この中では手に取りやすい価格帯です。
もし逆算した売価が相場を大きく超えるなら、打ち手は3つ。①生豆を見直す(仕入れ単価を下げる)②歩留まりを上げる(焙煎の精度)③ブレンドで原価を設計する。値付けを下げて我慢する、は最後の手段です。
→ 原価を配合でコントロールする方法は ブレンドの作り方と原価設計 へ。
内容量でも印象は変わる
| 内容量 | 原価(3.5円/g) | 粗利率60%の売価 | 向いている売り方 |
|---|---|---|---|
| 100g | 353円 | 890円 | 試しやすい。初めてのお客さん向け |
| 200g | 706円 | 1,770円 | 常連向け。1gあたりは同じでも割安に見える |
| 50g(お試し) | 176円 | 440円 | 飲み比べセットに。回転を作る |
値付けでやりがちな失敗
- 自分の時間を0円で計算する。いちばん多い失敗。忙しいのに残らない構造になります。
- 最初に安くしすぎる。値上げは、値下げの何倍も難しい。迷ったら高めから始める。
- 全部の豆を同じ値段にする。原価が違えば粗利も違う。高い生豆は、堂々と高く売る。
- 送料・決済手数料を忘れる。ネット販売なら粗利から引かれます。ここも先に織り込む。
- 粗利率を測っていない。売った後に「結局いくら残った?」が分からないと、改善できません。
値付けは、一度きりの決断じゃない
生豆の相場は動きます。円安でも動きます。だから値付けは定期的に見直すもの。原価と粗利を毎回記録していれば、「そろそろ上げどきだ」が数字で分かります。感覚で悩む時間が、判断の時間に変わります。
二ハゼのプロ機能なら、豆を選ぶと記録した歩留まりから原価/gを自動セット。内容量と目標粗利率を入れるだけで推奨売価が出ます。ロットごとの粗利・月別収支も見えて、値上げの判断まで数字で。
まとめ
値付けは「原価に足す」のではなく「粗利率から逆算する」。式は 売価 = 原価 ÷(1 − 目標粗利率)。自家焙煎の豆売りなら粗利率60〜70%が目安で、そこには包材・光熱費・ロス・あなたの手間が含まれます。最後に相場と照らして、迷ったら高めから。そして原価と粗利は記録して、定期的に見直しましょう。
- コーヒー袋(バルブ付き・100g)包材は原価の一部。単価を把握して売価に織り込む。
- ラベル・シール焙煎日と豆名を書くだけで、印象と信頼が変わる。
- コーヒースケール(0.1g)内容量の詰めムラは、そのまま粗利のブレになる。
- シーラー(卓上)袋の密封に。鮮度を保てて、商品らしい仕上がりに。